土曜日。ここ数日は23:30に寝てしまうのにはまっている。朝起きて中野までの道を歩く。何となく春を感じる気候で気分が良い。晴れてる時の中野のことが、いまだにずっと好き。バイトはちょうど良く忙しく、美大の三年生で就活を控えているという女の子と初めて会い、一緒に働いた。自分の素性を知らない歳下の女の子に嫌われるのが怖いという感情が生まれてきた。こういうことだったのか。就活について話を聞かれたけど、わたしはいわゆる就活をスルーしてきたから、全然無力だった。代わりに「どれだけ楽しくない仕事でも(職場の)人が良ければ続くし、どれだけ望んだ仕事でも人が嫌いだったら辞めちゃうと思うな」とだけ言った。わたしはこれまでの職場二つに死んでほしい人がそれぞれいて、そのおかげで今は三つ目の職場に漂着している。マスターが苦労して作り上げた60周年記念のお店のZINEをもらって帰った。読むのが楽しみ。だんだん喫茶店での働き方を思い出してきた。
稲吉さんと久しぶりに会った。年末からなかなかタイミングが合わずすれ違っていたから、すごく久々に感じた。安心してしまった。わたしは最近これまで長く身を浸していた日常とは全然違う場所・人との関係性の中を必死に生きていて、だんだん自分という人間のことを忘れてしまっていた。それは自分で思っているよりも、かなりわたしを蝕んでいたみたいだった。わたしのことをずっと知っている人と、手放しに話してお酒を飲んだ。懐かしい全能感だった。いつもの戎の後、ずっと気になっていた酒造千鳥にも滑り込み、白魚の刺身を食べる。酒造千鳥の前でたばこを吸っている時に聞こえてきたおじさん同士の会話:「陽が長くなりましたねえ、春みたいで」「今日は春っぽかったですもんねえ」「春も近いですね」(酔っているのに夕方の外はまだまだ明るくて、暖かくて、わたしは泣きそうになった。みんな春ってなんかやっぱり嬉しいんじゃないかな)
酔って中野まで繰り出し、市川も来てくれたにもかかわらず、体調が変になってきて帰ってしまった。結構申し訳なかった。わたしは年々酒癖が悪くなってきている(というか、お酒が入って露呈する自分の本来の浅ましさに開き直ってきたのかもしれない)。市川から「パーカーをあと100枚着てください」と連絡が来ていた。久々の気持ちを思い出した日だった。何とか帰りつき、久しぶりの人と電話をした。どうにも終着しないこともあるよね、と言われたことを覚えている。寝た。
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日曜日。少し二日酔いで起きる。昨日の色んなことが夢のようで落ち着かなかった。意味のないネットサーフィンに二時間ほどを費やし、やっと起きる。昨日お店が忙しくて食べられなかったまかないを食べた。窓を開け、久しぶりに自分の家でコーヒーを淹れる。ホントはずっとこうしたかった。天気が良すぎる、春だった。植物をベランダに出し、洗濯した。今日は花枝くんがブライスたちとアメリカで会い、今日はブライスがやっているラジオ番組?(よく分かってない)に出ているみたいだった。よく分からなかったけどアプリを入れたら何とか聴けた。区役所に向かう道中で聴いていたら、すかんちの「好き好きダーリン」が流れて笑ってしまった。緊張しているのが伝わってくる花枝くんの声が、懐かしかった。


役所でマイナンバーカードを更新する。窓口のおばさんに「いいですねえ、お雛様の誕生日で」と言われ、嬉しかった。家に帰って久しぶりに自分の家の掃除というものをしてみたら、良い気分になった。神保町に行く。りんちゃんに会った。りんちゃんはいつもかわいい服を着ていて、今日は牛柄のスニーカーを履いてた(「人間も動物ですからね!」と言っていた)。伯剌西爾に行く。りんちゃんは今年の秋ごろには本格的に愛媛に引っ越し、旦那さんの営むみかん農家(おめでとう)とは別に自分でトマトを育てるつもりらしい。わたしからしたら何も意味が分からないけど、りんちゃんのスピード・ガッツ・筋の通り方の景気の良さには、いつも助けられたり楽しませてもらったりしている。ここまで潔い生き方を自分自身の手で選択(踏み抜いて、の方がよりニュアンスは近いかも)している人を知らないかもしれない。結婚ってどういう感覚なのか、教えてもらった。
夜は視聴室で白と枝を見た。コントラバスの響きでお湯に入っているような感覚に包まれ、数曲夢の中を彷徨ってしまった。こんなに外で体から安心してしまうのは珍しいことだった。このまま死んでしまえれば良いのになと思うくらい、幸せを感じた気がする。言いたいことがあるはずなのに、上手く言えない。シャッターが閉まり切った、人通りの少ないサブナードを通って帰った。
